コラム

2019.10.26 知識

最近増えている抜毛症（髪を抜く癖）

「抜毛症」の症状は？

自分で自分の髪の毛を抜くという不思議な行為を伴う抜毛症ですが、個別のケースで実際の態様は異なります。例えば、意識して数本から数十本の髪を一気に引き抜いてしまう人もいれば、一本一本プチプチと抜く人もいます。無意識に行動する人もおり、例えばテレビを見ながら、本を読みながら、あるいは時間を持て余している時に、無意識下で抜いてしまう人もいます。

意識的に行う人は、髪を抜く行為によって快感を覚える人もいますし、逆に自分の行動が嫌でしょうがないという風に嫌悪感を持ちながらも、自分の行動を止められない人もいます。個々人のケースで実際の態様は様々ですが、自分の髪を自分で抜くという行為が共通しているので、これらの行動は「抜毛症」、あるいは「トリコチロマニア」という名前で呼ばれています。トリコは「毛」を、チロは「引っ張る」、マニアは「熱中」という意味があるようです。

抜毛症の原因は？

こうした行動を起こす抜毛症について、今のところ直接の原因は分かっていないのが現状です。思春期頃の児童生徒、また女性に比較的多いことが報告されており、ストレス耐性の低い人が発症しやすいことから、ストレスを起因とした精神疾患の一種と見ることもできます。

何らかのストレスを感じた際の心理的防御として髪を抜く行為に走ってしまう、心理的な苦痛をかわすために快感を覚える行為として髪を抜いてしまうという行動に出るのかもしれません。自分ではいけない行為と分かっていても止められない人もいることから、強迫性の行動障害とみることもできます。ただ、確定的な原因はこれだと決めつけることができないので、はっきりとした原因は不明のまま、本人や家族の希望に応じて医師が治療を行っているのが現状です。

抜毛症はどのように治療する？

抜毛症は通常の抜け毛、薄毛の治療とは様相が異なります。抜いてしまった髪の毛の量が多く、地肌の露出が激しいケースでは「髪を生やす」側面の治療を進める必要がありますが、いくら髪を生やしてもまた抜いてしまっては根本的な改善は望めません。ケースにもよりますが、抜毛症の患者さんには心理的なアプローチによるサポートが必要になることが多いです。抜毛症に対して、一般にどのような治療方法が検討されるのか見てみましょう。

①　心理カウンセリング

症状がそれほど重くないケースでは、カウンセリングによって本人が抱える不安や恐怖などを上手くコントロールできるようにし、髪を引き抜く行為が必要なくなるように修正していくこともできます。家族など身近な人が実は不安の原因になっていることも多いですし、身近な人は関係が近すぎてカウンセラーとしては適さないとされます。ですからカウンセラー役は知識のある第三者が務めなければなりません。

②　薬物治療

比較的症状が重く、心理カウンセリングだけでは不十分と判断される場合は薬物治療も並行して行います。中枢神経に作用して精神活動に影響を与える向精神薬を用いて、望ましくない行動をコントロールするようにします。具体的には、ケースに応じて抗うつ剤や精神安定剤、睡眠改善薬などの使用が検討されます。

③　頭髪治療

心理面の治療と並行して、ダメージを負った頭髪の治療も行います。抜毛行動から頭皮に傷が付いたり、炎症が起きている場合はまずは皮膚疾患の治療を優先します。皮膚科的な治療の目途が付いたら適時に頭髪治療に切り替え、髪を生やす治療を進めていきます。頭髪治療では、ホルモンが影響しないと判断すればフィナステリド製剤などは使わず、発毛作用が強いミノキシジル製剤やビタミン剤などをメインに考えます。女性は元々フィナステリド製剤が使えないので、その他の発毛作用が強い薬剤で治療を進めます。

女性は要チェック！自分で髪を抜いていませんか？

今回は自分で自分の髪を抜いてしまうという不思議な症状「抜毛症」を取り上げて見てきました。比較的若年者や女性に多く見られることと、自分でも気づかずに症状が出ているケースもあるので、自分に該当する症状が出ていないか、家族など近くで生活する人に一度確認してみても良いと思います。

当院では頭髪全般の疾患を扱っていますので、抜毛症に対しても丁寧なカウンセリングで治療を進めていきます。お気軽に当院の無料カウンセリングにお越しください。