2019.9.7 悩み
AGAだけじゃない!?男性の脱毛症の解説
男性の薄毛のほとんどは体内のホルモンが原因となる男性型脱毛症(AGA)です。ただ薄毛を引き起こす原因はAGA以外にもいくつかあります。AGAとは全く別の機序で起こる脱毛症もあるので、抜け毛の増加が気になる人はぜひ本章で似た症状が無いかチェックしてください。
脂漏性脱毛症
頭皮の皮脂過剰が直接の原因となり起きるのが脂漏性脱毛症です。頭皮は元々皮脂分泌が盛んな部位ですが、皮脂は本来皮膚のバリア機能として働くので悪者ではありません。しかし何らかの要因で皮脂の量が過剰になってしまうと、頭皮環境を悪化させて脱毛症に繋がることがあります。皮脂が過剰になると頭皮の常在菌であるマラセチア菌の異常繁殖を招き、頭皮に炎症を起こしたり、強い痒みを伴ったり、大量のフケを発生させることがあります。
フケは後述するひこう性脱毛症の症状でもありますが、ひこう性の脱毛症では乾燥したフケであるのに対して、脂漏性脱毛症のフケは皮脂を多く含むためベタベタしている点で違いが出ます。治療法としてはマラセチア菌を抑える抗真菌薬の塗布や、抗真菌剤入りのシャンプーの使用、日常では油物の摂取をできるだけ避けるなどの生活習慣の改善を並行して進めます。
ひこう性脱毛症
ひこう性脱毛症はフケが原因で起こる脱毛症です。普通の人でも多かれ少なかれフケが出ることはありますが、病的なひこう性脱毛症では大量のフケが発生します。フケが毛穴を塞いでしまうと、常在菌が異常繁殖して頭皮に炎症を起こしたり、毛穴づまりを起こして毛髪が正常に生育できない環境になってしまいます。
前項でお話したように、ひこう性脱毛症のフケは乾燥しているのが特徴です。大量のフケが発生する要因はホルモンバランスの影響のほか、アレルギーや生活習慣などが考えられますが、ケースごとに医師が問診で聴き取りを行い要因を探っていきます。ひこう性脱毛症の治療法としては、脂漏性脱毛症と同じように抗真菌薬を検討するほか、炎症に対してはステロイド剤が選択されることもあります。
シャンプー剤は軽症の場合は通常のシャンプーの中でも刺激の少ないアミノ酸系シャンプーへの切り替えを指示されるだけで済むこともありますが、常在菌の影響が強いと判断された場合は抗真菌薬入りのものが適用になることもあります。
機械的脱毛症
外傷性脱毛症とも呼ばれますが、機械的脱毛症は何らかの物理的な刺激により起きる脱毛症の総称です。機械的脱毛症はさらに以下のような分類ができます。
① 圧迫性脱毛症
仕事できついヘルメットを長時間被らなければならないなど、圧迫性の刺激によって引き起こされます。
② 牽引性脱毛症
ヘアスタイルの維持などの目的で髪を縛ったり、固定したりといった長時間の牽引力(引っ張る力)により起こる脱毛症です。女性に多いですが男性にも起こり得ます。
③ 抜毛症
ストレスなどを起因として自分で自分の髪を引き抜いてしまう症状をいいます。心理的側面の治療が必要になることもあります。
円形脱毛症
円形脱毛症はまだ根本的な原因が解明されていませんが、ストレスや自己免疫機能の異常によって起きるものと考えられています。いわゆる10円ハゲが有名ですが、実際には症状の重さによっていくつかのタイプに分けられます。
① 単発型
円形またはやや楕円形のはっきりとしたハゲが突然現れる形で発症します。AGAは長年かけて徐々に薄毛が進行しますが、円形脱毛症は発症スピードが非常に速いのが特徴です。単発型の場合は放っておいても自然に治ってしまうことがありますが、周りの毛髪がある部位と比較してかなり目立つことから、円形脱毛症の症状自体がストレスとなり心身両面で悪い影響を与えることも考えられます。
② 多発型
単発型が二つ以上同時に発生するのが多発型です。多発型では1年程度の長期間のスパンで治療を進めます。
③ 蛇行型
まるで蛇が這うような形で脱毛斑を認めるため蛇行型と呼ばれますが、側頭部に現れたり、後頭部付近に現れたりとケースによって発現場所は異なります。多発型よりも治療に期間がかかり、数年かかることも珍しくありません。
④ 全頭型
頭髪がほぼすべて抜け落ちてしまうような全頭にわたる脱毛症状となります。完治は難しく、かつらなどの利用が勧められることもあります。
⑤ 汎発型(ばんぱつがた)
脱毛症状が頭髪だけでなく、眉毛や体毛などにまで広がるタイプです。こちらも完治は大変難しいので、カツラなどの利用が勧められることもあります。円形脱毛症の治療方法としては、抗アレルギー剤やステロイド剤、発毛作用のある薬剤を使用したり、免疫細胞に刺激を与える冷却療法などが検討されることもあります。
AGA以外の脱毛症もチェックしておこう
本章では男性に起こりうるAGA以外の各種の脱毛症について見てきました。日常で見られる男性の薄毛はほとんどがAGAによるものですが、それ以外にも色々な脱毛症があることは知っておいてください。一つ注意点として、これまで見てきた各種の脱毛症はAGAと並行して起こることもあります。
AGAと同時に発症して抜け毛が増えている場合、上記の脱毛症を治療しても薄毛が進むこともあります。気になる症状が現れたらぜひ当院までご相談ください。